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C O N T A C T

Toyoaki Washida
toyo 'at' genv.sophia.ac.jp

O V E R V I E W S

プロジェクト S10-4-2-1

本プロジェクトの略称はS10-4-2-1です。これは、環境省環境研究総合推進費
      戦略的研究開発プロジェクトS-10:「地球規模の気候変動リスク管理戦略の構築に関する総合的研究」 
      テーマ4:「技術・社会・経済の不確実性の下での気候変動リスク管理オプションの評価」 
      サブテーマ2:「複数主体の相互作用を考慮したエネルギー経済モデルの開発動向調査と評価」
      研究グループ1
に基づいています。
      プロジェクトS-10全体のホームページは左の「ICA-RUS」、もしくはこちらから(外部サイト)。



本研究の概要

巨大な経済規模を持つ、アクターとしての国家や国家グループの戦略的行動は、気候変動問題など の地球規模の環境問題においてきわめて重要な社会的なリスク要因となる。気候変動のリスク管理に おいてこうした戦略的行動、グループ形成、交渉指向性などを考慮して、国際政策上のシミュレーシ ョンを実行すべきところだがこれまでこうした社会的側面については、決定論的モデルが主に用い られ軽視されてきた。本研究は、自然的技術的不確実性とは異なる、こうした社会的不確実性を合理 的に扱う方法論的枠組みと現実的シミュレーションモデルを提示する。

    本研究では、エネルギー経済モデルにおいて、複数主体(国家、セクター、それらの集団)の非市 場的(直接的)相互作用を考慮するシミュレーションモデルを、可能な限りの世界地域分割、部門分 割(エネルギー種類の分割含む)によって構成するための調査、およびそれを踏まえてモデルの構成 を行い、具体的に気候変動問題で国、あるいは複数国家のグループの行動を組み込み、相互作用の予 測と帰結、あるいはパレート最適性の基準からみたその効果や、総コストからみた効率性の評価を行 う。そして、以上の取り組みをふまえ、テーマ1の統合的リスク管理モデルへの組み込みの可能性、 方法論を示す。

    複数主体の行動を組み込む上での理論的枠組みとしてはゲーム理論を用い、国際市場を組み込むべ きベースモデルとしては、一般均衡型の世界モデルを用いる。 具体的には、本研究の第1年目で、これまでに開発されてきたエネルギー経済モデルの分類、単純 型での再現および評価を行い、それを踏まえ、課題を深めるための国際的なワークショップを開催す る。それによって国内外のネットワークを広げる。第2年目では、世界経済を可能な範囲で地域分割、 部門分割した応用一般均衡モデルに比較的単純化された温暖化メカニズムを統合し、各国、各グルー プの独自の政策の帰結と評価が行えるようにする。第3年目では、開発したモデルでいくつかのゲー ム論的均衡をシミュレーションし評価する。第4年目では、この年度を迎えての、気候変動等に関す る国際的動向をふまえ、国際的交渉課題に関するシナリオの設定、それに基づくシミュレーションを 行い、最終年度で総合的評価、対外的成果の公開、研究のまとめを行う。


本研究の目的

気候変動のリスク管理上の課題である多数主体の相互作用から発生する不確実性の分析のために は、それを組み込むべき適切なモデルが必要になる。エネルギー経済モデルでは、代表的な応用一般 均衡モデルにおいても、通常、多数の経済主体の相互関係が「市場への参加」と「市場の連関」を通 して考慮されている。しかし、気候変動問題など公共財型の影響を各主体に与える場合は、「市場」 を経由した個々の主体の合理的行動は望ましい結果をもたらさない。そして、そこにフリーライダー 問題や国際交渉や、さらにはグループ形成(結託形成)などの、伝統的な経済学では扱えない複雑な 相互関係が発生する。

    非市場的な多数主体の相互作用状況を扱う精密な理論的枠組みとして、ゲーム理論は多くの研究の 蓄積がある。気候変動問題に関しても、現実データに基づく、ゲーム論的シミュレーションは1990 年代から研究が開始され、すでに提携型(coalition)のゲームを組み込んだ気候変動に関するグロ ーバルシミュレーションについては、M.H.Babiker (2001), J.Eyckmans & H.Tulkens (2003), J.Eyckmans & M.Finus (2006), M.Finus, B.Rundhagen & J.Eyckmans (2010), Z.Yang (2007)などの研究の蓄積がある。複数主体における行動のナッシュ均衡とパ レート最適解との比較も行われているが、一方、現実の国際交渉プロセスを交渉ゲームの視点から分 析したものとしては、鷲田(2010)、「地球温暖化対策をめぐる地域別の交渉指向性の推計」)はあるが、 限られている。

    本研究では、(1)これまでの研究、および今日われわれが利用可能な、理論的枠組み、利用可能 なデータ、計算アルゴリズムと能力からみて、多数主体の相互作用と世界貿易の均衡を同時に組み込 んだモデルとして、どれだけの現実性を確保したシミュレーションモデルが必要かつ可能かを調査し 評価する。(2)政策的含意を得られるような現実的な、統合モデルを、自然科学的温暖化メカニズ ムの組み込み方、ゲーム類型、地域分割、部門分割そして計算能力を考慮し構成する。(3)世界が 当面する気候変動に関する交渉プロセスをシミュレーションし、各国、各グループの行動の蓋然性評 価と効率性評価を行う。


REFERENCES
Babiker, M.H. (2001) "The CO2 Abatement Game: Costs, Incentives, and the Enforceability of a Sub-
    global Coalition" Journal of Economic Dynamics and Control 25(1):1-34.
Eyckmans J. and M. Finus (2006) "Coalition formation in a global warming game: How the design of
    protocols affects the success of environmental treaty-making" Natural Resource Modeling 19(3):323-
    358.
Eyckmans, J. and H. Tulkens (2003) "Simulating Coalitionally Stable Burden Sharing Agreements for
    the Climate Change Problem" Resource and Energy Economics 25(4):299- 327.
Finus M, B. Rundhagen, J. Eyckmans (2010) "Simulating a sequential coalition formation process for
    the climate change problem: first come, but second served?" Annals of Operations Research1-19.
Yang, Z. (2007) Strategic Bargaining and Cooperation in Greenhouse Gas Mitigations: An Integrated
    Assessment Modeling Approach,
the MIT Press.
鷲田 豊明 (2008) 「地球温暖化対策をめぐる地域別の交渉指向性の推計 -統合モデルによるナッシュ均衡と
    ナッシュ交渉解の比較分析-」 http://eco.genv.sophia.ac.jp/paper/dynamicnash/dnash080527-1.pdf